2026年10月24日、東京湾大華火祭が11年ぶりに開催された。
あいにくの雨模様。夜空を覆う低い雲に花火の輪郭はかすみ、少々残念な空模様ではあったが、久しぶりに東京湾の夜空を彩る大輪の花火を眺めることができた。
最後に開催されたのは2015年8月。東京オリンピック・パラリンピックの選手村建設などの影響により、翌年から休止となっていた。今回は中央区と港区の区制80周年を記念しての復活である。
思えば、この11年間で世界も日本も大きく変わった。
2015年当時、東京は2020年のオリンピック開催に向け、希望と期待に満ちていた。しかし、その後に世界を襲った新型コロナウイルスのパンデミック。人々の往来は制限され、街から賑わいが消え、当たり前であった日常が一変した。
東京オリンピックも1年延期され、2021年、ほとんどの競技が無観客という異例の形で開催された。あの頃、世界中の人々がマスクを着用し、互いに距離を取りながら生活していた光景は、今も記憶に新しい。
日本では平成から令和へと時代が移り、少子高齢化と人口減少が一段と進んだ。長く続いた低金利や物価の安定にも変化が生じ、円安、物価上昇、人手不足など、企業経営にも日々の暮らしにも新たな課題が突きつけられている。
一方、世界に目を向ければ、2022年のロシアによるウクライナ侵攻、2023年以降のイスラエル・ガザをめぐる戦闘、そして今年のイランと米国・イスラエルの軍事衝突と、戦争や紛争が絶えない。
国際社会の分断は深まり、エネルギー供給や物流、金融市場への影響も懸念される。かつて当たり前のように語られていたグローバル化と国際協調が、決して揺るぎないものではなかったことを思い知らされる。
その一方で、AIをはじめとする技術革新は驚くべき速さで進み、私たちの仕事や生活を変えつつある。世界はかつてないほど情報でつながっているはずなのに、人々の価値観や国家間の溝は、むしろ深まっているようにも感じられる。何とも皮肉なことである。
そんな11年間を経て、再び東京湾の夜空に花火が打ち上がった。
この間に晴海の街並みも大きく変わり、かつての選手村は新たな住宅街へと姿を変えた。街も人も、そして時代も、絶えず移り変わっている。
雨雲の向こうにぼんやりと浮かび上がる花火を眺めながら、11年という歳月の長さと、その間に起こった数々の出来事に思いを巡らせた。
花火の美しさは、ほんの一瞬である。だからこそ、人々の心に深く残るのであろう。
平穏な日常の中で、こうして花火を眺められることも、決して当たり前ではない。世界のどこかでは、今この瞬間も戦禍に苦しむ人々がいる。
次に東京湾の夜空を彩る花火を眺めるとき、世界が今より少しでも穏やかであってほしい。
11年ぶりの花火は、華やかさとともに、時の流れ、平和の尊さ、そして日常への感謝をあらためて感じさせてくれるものであった。
雨にかすむ花火も、また忘れがたい秋の夜の風景である。