サプリメントが、有名経営者の報道をきっかけにまた盛り上がっている。

6年前ほど、CBD(カンナビジオール)輸入企業から相談があった。制度の枠組み、臨床で示されている効能、国内で推奨している医師や団体の実名と根拠まで、相当に洗ったうえでの結論は辞退であった。米国には特定のてんかんに対する医療用に使用されている一方、一般流通のCBDは医薬とは別レイヤーで評価すべきプロダクトである、という当たり前の線引きがまず重要であった。相談案件の実態は「CBDたばこ」の販促であり、嫌煙が進む日本市場、とりわけたばこ関連カテゴリのレピュテーションと流通・広告のハードルを総合すれば、積極的な展開は難しいと判断した。医薬なのか嗜好品なのかは、社会的受容も運用もまったく別物である。

サプリ全般への向き合いも同じである。ビタミン剤、青汁、DHA、高麗人参など、見かけるものはひと通り試した時期があった。「あくまで個人の感想」であるが、体感や体の変化は乏しく、相対的に良かったのは乳酸菌であった。腸が整う感じがあり、これだけは続けやすかった。最終的に効いたのは、食生活の見直し、少しの運動、ちゃんと眠ること、そしてストレスを溜めない仕組みであった。サプリに費やした時間とお金のいくばくかは、台所と睡眠環境とメンタルのメンテに回した方が費用対効果は高かった、というのが現在の結論である。

とはいえ産業は拡大している。高齢化と健康志向、美容需要、SNSの可視化が追い風であり、機能性表示や新素材のニュースは止まらない。しかし“市場の熱”と“自分の体”は別の主体である。海外の成功談や有名経営者の「マイルール」は読み物として面白いが、直ちに自分の最適解になるとは限らない。サプリはあくまで脇役であり、主役は日々の生活である。まず土台を整え、目的を絞って最小限から試す程度の冷静さで十分である。

最後に写真の説明を添えておく。酷暑の京都に出張した折、宿へ戻る前にふと見上げた夜の京都タワーを撮ったワンショットである。熱気をまとった街の空気と、塔の白い輪郭の涼しさが、上記の内容と真逆にストレスフルで疲弊感を覚えた自分との距離感を象っているように見えた。