抹茶世界席巻!!日本茶の新たなステージ!!

【アジアを駆ける抹茶ブランド】マニラ三越“THE MATCHA TOKYO”と、一〇八抹茶茶廊の躍進
2024年、日本の緑茶輸出額が過去最高を更新した。農林水産省の統計によれば、1〜11月の輸出額は321億円を突破し、政府の掲げていた2025年までの目標312億円を1年前倒しで達成。輸出の主役は抹茶(粉末状緑茶)であり、全体の約8割を占めている。抹茶はいま、和食に続く“クールジャパン”の象徴として、世界を席巻しつつある。

このトレンドを象徴するひとつが、マニラ三越(MITSUKOSHI BGC)に出店する「THE MATCHA TOKYO」である。日本の有機抹茶を軸としたドリンクやソフトクリームが人気を博し、週末には長蛇の列ができる。写真の通り、洗練された店舗デザインとミニマルな空間は、日本ブランドならではの美意識を反映している。とくに「MOCHI SOFT SERVE」など、日本独自の食感や美味しさを活かした商品は、東南アジアの若年層やファミリー層に深く浸透している。

このように日本茶ブランドが東南アジア市場で成功する例は、「THE MATCHA TOKYO」だけにとどまらない。もうひとつ注目すべき存在が、北海道・旭川発の「一〇八抹茶茶廊(108 MATCHA SARO)」である。

「一〇八抹茶茶廊」は、香り高い抹茶を使用したタピオカドリンクや、手焼きのたい焼き、抹茶ソフトなどを主力商品として展開。台湾、香港、シンガポールなどにも出店しており、Facebookを通じて現地の消費者と積極的にコミュニケーションを行っている。和の菓子と現地の食文化を融合させた商品開発力は、海外展開における重要な差別化要素となっている。

抹茶の魅力が“味”だけにとどまらず、健康・オーガニック・サステナブルといった現代的価値観と接続される中、これらのブランドは単なる流行ではなく、文化的アイコンとして機能し始めている。とくに、若い世代がSNSで「日本茶のあるライフスタイル」を発信し、広めていく姿は、新たな茶文化の担い手とも言えるだろう。

国内では煎茶市場の低迷が続く一方で、抹茶原料である碾茶の価格は上昇基調にあり、特に有機栽培の需要は旺盛である。輸出拡大を契機に、静岡・鹿児島などの産地では碾茶製造への設備投資が進み、茶業の再構築に向けた動きも始まっている。抹茶が日本の農業と地域文化にとって希望の光となる可能性は、十分にある。

マニラ三越の一杯、そして一〇八抹茶茶廊の広がりは、もはや“日本の抹茶”ではない。それは、世界が共有する文化資産となりつつある。